思ったことをすぐに口に出すって公害かもよ。

メルマガバックナンバー 気まぐれピックアップです。

 

昨年の秋に配信した
お便り多数いただいたメルマガバックナンバーです。

 

思ったことをすぐに口にしちゃうおじさんをテーマに
私の中に揺れ動く微細な心情をメルマガにしてみました。

 

 

————————————-

「思ったことをすぐに口に出しちゃうおじさん」
宇宙のへそとエッセイ 2019年11月13日版

とある行きつけの小料理屋さんで
隣の席に居合わせたおじさん。

 

年の頃は、50代半ば、
もしかしたら40代後半かもしれないけれど
坊主に近い短髪で
白髪の割合が多いせいで
そうみえたのかもしれない。

 

無駄に濃くて長い睫毛は
柴俊夫か北大路欣也を思い出させたが
ハンサムかどうかはここでは触れないでおく。

 

このおじさん、2.3人と一緒に飲んでいて
楽しそうに食事をしていたが
何かの拍子に、一人で来店していた私は
おじさんたちの仲間に入ることになった。

 

おじさんたちは
意外にも、とても紳士で
下ネタなどには容易に手を出さず
時事ネタやゴルフの話を中心に
話を膨らませていた。

 

※まつ毛の長い白髪のおじさんを
便宜上、ここでは俊夫と呼ぶことにする。

 

私はおじさんたちの一味に加わりはしたが
話すことは控えて、聞かれたことだけに
簡潔に答えるという
聞き役に徹していた。

 

時々邪魔にならない程度の合いの手を入れて
ふむふむとうなづいて
同意できないことには、
え〜とも言ったし、素直に
ほ〜と思ったことには同意をしたりした。

 

その中で気づいたことがあった。
俊夫は他のおじさんに比べて
思ったことをすぐに口にする。

 

頭に思い浮かんだことを
間髪入れずに口にしているようだった。

 

それについて
仲間のおじさんたちに
都度注意をされていたが
俊夫は全く気にもしてない様子で
マイペースに思ったことを口にしていた。

 

駄洒落の時もあれば
言わなくてもいいようなことだったりもするし
とにかく口の滑るおじさんで
周りのおじさんに毎回釘を刺されていた。

 

そうこうしていると
一人のおじさんが
話の流れで私に
私が答えにくい質問をした。

 

「やっぱりおじさんは
女性には嫌がられるよねー」
私は瞬間的にこれまでのおじさんの話を
回想しながら
ここで私が本当のことを言ってしまうと
なんとなくおじさんたちを
しらけさせてしまうかもしれない。

 

言葉が足らない場合、
この手の質問に対する答えは
大変誤解を招くことが多い。

 

かと言って、熱弁するのも
なんだか雰囲気としておかしい。
いろんな意味も含めて
瞬間的に「答えない」という選択をして
私はこう答えることにした。

 

ここまで多分
0コンマ何秒の世界。

 

「おじさんの定義は
人それぞれありますから〜」

 

絶妙にディスることなく
おじさんの質問を完全スルーすることなく
一応言葉のボールを投げ返すことに成功した。

 

ぷひ〜
答えづらい質問してくるんじゃないわよ。
セ〜フ。

 

なんて浸っていたら
俊夫が空気を読まずに
こんなことを言ってきた。

 

「質問に答えてないよね?
嫌がられるか嫌がられないかを
きいてるんだけど」

 

俊夫。

 

貴様が掘り返さなかったら
うまくいってたんだよ。
てか、貴様がそれをいうことで
私にも恥をかかせ、
本音を聞かされて傷つくおじさんが
世の中に増え
何にも良いことなんてないんだ。

 

なぜ気づかない!!
なぜわからない!!

 

先ほどから思ったことを
すぐに口にするなと
散々叱られていたではないか。

 

俊夫っ!!!!!

 

私は完全に無視することにした。
それがいい。
それでいい。

 

私も随分と社会性が身についたものだと
我ながら感動すら覚えた。

 

この一連の出来事を後に振り返ってみたのだが
結局すぐに口にしちゃう
というのは、
何かの文献や論文で目にしたのだけれど
「自制心」というものと関連するらしい。

 

すぐ駄洒落を言ってしまったり
思ったことをすぐに口にしてしまう
というのは結局「我慢ができない」
という状況と酷似しているそうな。

 

私はこの日俊夫が繰り広げた
一夜の出来事を時々思い出しながら
自制心のない大人になるべからず!を
教訓として今でも深く胸に刻んでいる。

————————————–
毎週メルマガ発行してます。
http://cestsibon.work/member/formadd/?group_id=1